コラム

 


陰山先生の講演内容
(2003健康フェアーより)

 

2003年7月12日あいち健康の森プラザで行われた2003健康フェアーから陰山先生のご講演をお届けいたします。 

『皆さんこんにちは、ただいまご紹介にあずかりました陰山です。現在私は愛知医科大学の救命救急センターに所属しております。それとともにIOUというオランダの大学で統合医学という非常に変わった新しい学問を学ぶことができる学校ができあがりまして、理事長として務め企画を進めさせていただいております。
  そもそも私は統合医療、民間療法や東洋医学系統にとても深い興味を持っておりまして、子供のころから自己流で学習をしてまいりました。今日会場に着いて、先ほどからいろいろな民間療法とか健康食品を販売しておられる方々のお話を聞いていてとても嬉しかったですね。とっても“あやしそうな”話を聞いていますと、なぜかわくわくするのですね。今日は、今後の医療においてこのような医療体系がもしかすると、西洋医学の中にどっぷり入ってくる可能性があるという根拠をお話したいと思います。

<恩師との出会い>
 私は医師と歯科医師の二つのライセンスを持っています。最初歯科医師になりまして、歯科麻酔学を専攻しましたけれど、その中で戸出一郎先生に出会いました。その先生は、東京医科歯科大で針治療によるペインクリニッツクを実践しておられた先生で、西洋医学では治らないとされる病気を多くの実症例で素晴らしい結果をだされる方です。針1本でマジックのようにさまざまな症例をこなす診療を拝見するうち、弟子入りを志願し、5年ほど戸出先生に従事ささせていただきました。これがわたしの東洋医学臨床の始まりです。その後、アーユルヴェーダ、気功など色々な民間療法をかじっていくことになります。ところで今現在の私の医療哲学形成に大きな影響を与えた2つの体験があります。

<知夫里島の体験>
 一つは、隠岐諸島知夫里島での体験です。人口約500人のとっても小さな島なのですが、約2年間僻地歯科医療医師という立場で赴任させていただきました。そこでの非常に貴重な体験は、人間の健康とはなんぞやという私なりの結論を導き出したのです。
ところでここで予防医学に関して話しをさせていただきます。西洋医学の分野で予防医学、健康つくりにはどうしたらよいのかという結論は出ておりません。皆さんが病気になって病院やクリニックに行って病状は一応治ったとして、そのあと再発を防止するのにどうしたらいいかと聞いたときに、答えを出してくれる先生は非常に少ないと思います。
その理由は、医学部の教育の中に予防医学に関する情報が極めて少ないということです。さらに現在の保険医療のシステムの中で、予防医学に対する時間をとっていると経営が成り立ちません。保険の点数に予防医学に関してのカウンセリングが入っていないからです。
では、どこに健康つくりの情報を求めたらよいのでしょう。それは、日本においては民間療法の先生、あるいは、TVや本から自分で情報を集めるという方法になってしまうわけです。医者が情報を出せないため、“みのもんた”さんの番組の視聴率がどんどん上がるわけです。今IOUで進めています統合医学部のカリキュラムは、民間療法の先生方やあるいは全く医学に対する素人の方たちに、健康相談をプロとしてできるようになってもらうために東西を問わず医療の基礎を幅広く学んでもらうものです。
 さて、知夫里島の話に戻りますが、私が島での貴重な生活から得た健康つくり概念の基本は第一に“水”です。そもそも隠岐諸島には、日本名水百選の中にも二箇所入っている日本でも良質な水が出るところです。
島の65歳以上の高齢者率は40%を越えていますが、皆さんとても元気でいらっしゃいます。40代50代の方たちは、若僧扱いされて村議会においてもまだ発言権が少ないという状態です。政治の中心は60代で、70代そして80代の方がアドバイスをするのです。高齢者の方が皆さん特別に肉体的にも精神的にもお元気なのです。
第二に“食事”です。漁業が中心の島ですから魚介類を多く食べているのですが、島民の食べている魚は、旬の一番おいしいものです。そして自家栽培しているお米や野菜を食べています。これらにはバランスのとれたビタミン・ミネラルが豊富に含まれているわけです。
第三は“ストレスケア”です。島民のストレスケアは、なんといっても飲み会です。またお祭りがやたらに多いのです。月に2回程度はお祭りをしています。お祭りを通じてストレスを発散していたのですね。とにかく性格はみな共通して明るく笑いが絶えない、またおおらかな方ばかりで、病院にこられる方々の中でも心因反応として症状をだしている方をみかけることはほとんどありませんでした。
最近顎関節症というストレスが原因で発症する病気が都会の方を中心に増加傾向にあります。顎が開きにくくなったり、顎を開ける際にゴキッと音がするようになる病気です。東京で歯科診療をしていると、10人に1人は見受ける心身症のひとつですが、わたしの約2年間の知夫里島での歯科診療中、この病気に罹患している方はただの一人も見受けませんでした。
以上のようにとても元気なご老人の島といえる知夫里島での生活で、自分の頭の中での健康づくりの基礎哲学を確立しました。これらは教科書からではなく、実体験から湧き起こったものであり、わたしの中での信念になっています。
 もうひとつの貴重な体験は、ケニアマサイ族とのふれあいですが、紙面の関係で次号に掲載いたします。

 陰山泰成先生のプロフィール
NPO法人国際統合医学教育協会理事長、医療法人社団有夢会理事、情報医療センター顧問、グローバルサイエンス協会顧問、高輪クリニック院長、医師、歯科医師、健康科学博士、愛知医大救命救急センター医師。



  

 

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